ペットロスの乗り越え方!ペットとの別れや寂しさを克服するためには?

ペットロスの乗り越え方

「ペットロス」とは「ペットをなくした喪失感や悲しみ」のこと。愛するペットを失うことほどツライことはありません。悲しみで涙が止まらない。食事がとれない。眠れないなど身体症状が起きることも。

人によっては日に日に症状がひどくなることもあるほどです。周囲の人に「ペットぐらいで」などと言われ「自分はおかしいのでは?」と悩む人も少なくありません。

そこで今回は「ペットロス」とはそもそもどのようなものか。起こりうる症状や克服方法と合わせて、「近くにペットロスの人がいたらどうしたらいいか?」をお伝えします。(執筆者:伊藤悦子

 

ペットロスとは「伴侶動物の喪失体験と悲しみ」

「ペットロスの定義」=「ともに暮らした伴侶動物の喪失体験とそれに伴う悲嘆」。これはペットロスについて長年取り組んでいた獣医師の故・鷲巣月美先生による定義です。

「ペットロス症候群」という言葉もよく使われますが、人によってはネガティブな印象を受けることもあり、この記事では「ペットロス」を用いて説明します。

「ペットロス」にはペットが亡くなってしまうことはもちろん、行方不明や盗難などのトラブルも含まれます。いずれにしても大切なペットがいなくなってしまうことは、本当にツライ出来事に変わりはありません。

参考資料

ペットロスになるのはペットが家族同然の存在だから

獣医療の進歩やペットフードの開発が進み、ペットたちの寿命が延びています。そうなると一緒に過ごす時間が長くなり、ペットというより家族としての存在感が強くなってきました。また、「少子化・核家族化」もペットと人との関係が密接になった要因といえるでしょう。

「ウサギ・デグー・モルモット・ハムスター」などの小動物たち、インコなど鳥たちのほとんどは家の中で飼育されています。あたたかい触れ合いや絆があり、まさに一つ屋根の下で同じ時間を生きている「伴侶動物」です。

かつては外飼いが多かった犬ですが、今は室内で飼われる子が増えています。犬と人は3万年前からともに過ごしていたと考えられ、犬と思われる骨を埋葬していることもわかっています。

昔の人たちがペットロスになったかどうかはわかりませんが、犬を埋葬していたということは、犬の死を悲しんでいたと予想できそうです。犬との関係がもっと密接になっている今は、悲しみの度合いも深まっているのではないでしょうか。

イヤなことがあっても、家に帰ると慰めてくれるデグーたち。手のひらの中で安心しきって眠るハムスター。どんなに遅く帰っても玄関まで迎えに来てくれている犬。愚痴を黙って聞いてくれる猫。

そんな家族同然ともいえるペットを失ったら、ショックを受けるのは当然のこと。病気や老衰で心の準備ができていてもツライものですし、ある日突然失うのはかなりのダメージです。(参考:ペットの介護と終末期ケア

ペットを失うことで生じる体の不調と心の不調はいろいろ

飼い主さんはペットを失うことでショックを受けるだけでなく、心と体に思いがけない不調を起こすこともあるのです。ただ、次に紹介する症状以外が出る人もいれば、まったくでない人もいるので個人差があります。

体の不調

めまい、息切れ、動悸、食欲不振、胃痛、下痢、睡眠障害、全身の痛み、疲れやすいなど。

心の不調

悲しみ、怒り、孤独感、絶望感、看病や介護が長かった場合の安堵と自己嫌悪、ペットへの罪の意識など。怒りの相手は、自分自身や家族のほか動物病院の獣医師やスタッフへ向けられるものもあります。

行動の変化

涙がとまらない、ぼーっとする、ペットの遺品を身に着けてペットとの思い出をたどって散歩コースを歩き回る。逆にペットの遺品や写真を避ける、見られないことも。その他、集中力がなくなる、何もしたくない、人に会いたくない、会社や学校に行けない、ペットの幻覚を見てしまう、なども。

これらの症状は、2ヶ月もすると落ち着いてくると言われています。2ヶ月以上たっても改善されない場合は、専門家に相談してみましょう、

ペットロスを克服するには悲しむ自分を受け入れることから

自分の大切なペットを失ったとき、「こんなに泣いて自分はおかしいのでは?」「何にもやる気が出ないなんて、病気になってしまったのかも」と悩む人もいます。それだけペットを愛し、大切にしていたのですから悲しんで泣いてしまうのは当然です。

まずはペットを失って泣いている、悲しんでいる自分はまったく普通だと受け止めてください。これがペットロスを乗り越える第一歩です。

恥ずかしいことではないので、思い切り悲しんで泣くこと

ペットがいなくなったことで泣くのは「恥ずかしいこと」「異常なこと」ではありません。悲しみは悲しみとして素直に表現し、我慢しないことは喪の作業として重要です。そのほうが立ち直りも早くなります。

「自分は大人だから泣いちゃダメだ。」「冷静でいないとダメだ。」と思ってしまう人は特に我慢しやすく、立ち直りに時間がかかることもあるので注意してください。

人に話を聞いてもらうことも有効だが相手を選ぶことが大切

話を聞いてもらうことは大切ですが、相手によっては「たかがペットなのに」「いつまで落ち込んでいるの」と言われ、かえって傷つく可能性が高くなります。話を聞いてもらう相手は、静かに励ましてくれるペットロス経験者がいいでしょう。

家族や恋人など身近な人でもペットへの思いに温度差がある場合は、残念ながらなかなか理解してくれないこともあります。ペットロスカウンセラーもいますが、有料のことも多く、学生さんでは敷居が高いこともあるかもしれません。

そのような場合は、次に紹介するペットロスのグループミーティングがおすすめです。

ペットロスの自助グループミーティングに参加する

ペットを失った同じ立場の人たちと話すことで、お互い落ち着くことができます。話を聞いてくれる人が見つからない方、人の言葉に傷ついてしまった方に向いているでしょう。

ここで注意したいことは、グループミーティングは無料で一方的に助けてもらう場ではないということです。自分が落ち着いたとき、立ち直る光が見えたときは「他の人をサポートする」「話を聞く」など、自分ができる方法でグループに関わる気持ちを持っていたいものです。

獣医師広報板にも案内が出ています。(参考:ペットロスのセミナー
例えばペットロスのミーティングでは次のようなグループがあります。

ペットロスのミーティング

ペットロスに関するおすすめの本・絵本

ペットロスの絵本「虹の橋」

外に出かけたくないときは、ペットロスに関する本を読むことで気持ちを落ち着かせましょう。ネットも便利ですが、見たくない情報や心ない書き込みを目にする危険性もあります。

本なら好きなページを選ぶこともできますし、ペットロスに限定した話なので余計な情報も入ってきません。文字を追う気力がないときは絵本がおすすめです。様々なペットロスの本が出版されているので探してみてください。


虹の橋―Rainbow Bridge
ペットが死後に行くという「虹の橋」の絵本です。きれいな絵に心もほっとします。


ずーっとずっとだいすきだよ
大好きな犬エルフィーを亡くす少年の話です。小学生の教科書にも載っていますが、大人が読んでも心にしみてきます。


さよならをいえるまで
自分の大切な犬を突然失ってしまった少年の話。ペットが突然いなくなってしまった方に。


しっぽのある天使たち -その出会い、別れとペットロス-
「一緒に暮らせてよかった」あらためて思える一冊。愛犬家である獣医さんが書いた本なのでオススメです。


ペットの死、その時あなたは
ペットロス研究の第一人者の本は参考になるでしょう。体験談のほか、ペットロスとは何か?立ち直るヒントなどがわかりやすく書かれています。

ブログ・日記・手紙など記録に残す

ペットがこの世に生きていた証として「ブログやSNS」、または日記で記録を残すこともいい方法です。「写真を見るのもツライ」「思い出すと息苦しくなる」という場合はムリをする必要はありません。

しかし、少しずつでも記録に残すことで楽しかったことを思い出し、気持ちの整理がついてくるはずです。ブログやSNSで発信すると、同じような思いをしている人とつながれるメリットもあります。ペットに向けて手紙を書くこともおすすめです。

獣医師広報板の掲示板に書き込むこともできる

獣医師広報板には「ペットロス(メモリアルルーム)掲示板」があります。相談は受け付けていませんが、思い出や写真を掲示板に投稿することができ、他の方の投稿も読めるので「自分だけではない」と励まされるでしょう。

この掲示板には返信機能がないので寂しいかもしれませんが、逆に冷やかしなどがないので安心です。(参考:獣医師広報板「ペットロス(メモリアルルーム)掲示板」

Tears(ハムちゃんのなみだ)-絵本というサイトには、ペットロスで傷ついた気持ちが癒される絵本(イラスト)もあります。ペットロスというと「犬や猫の話」が多い中、ハムスターが主人公です。

専門医に相談することも大切

本人はもちろん、周囲の人も心配だな・・・と思ったら躊躇しないで専門医に相談しましょう。ペットが亡くなって、「落ち込みすぎて病院にかかるなんて恥ずかしい!」と思うかもしれませんが、決して珍しいことではありません。

2016年に行われた調査によると、医師による対応が必要と思われる飼い主さんは、ペットの死後2ヶ月後で56.7%。4ヶ月後で40.7%という高い数値になっています。

お墓を作ったり葬儀をしたりすることも効果的

人間と同じで、ペットの死においても葬儀や法要を行うことは「喪の作業」としても大きな効果があります。動物霊園によっては、「初七日・四十九日・一周忌・お盆」などの法要をしてくれるところがあります。

大々的にやらなくても、手作りのお墓や仏壇に好きだったフードをお供えして「話しかける」だけでも気持ちが落ち着くのではないでしょうか。ペットが亡くなった場合、昔は庭に埋めたり自治体で遺体を焼却してもらったりしていました。

今はペットの葬儀会社も増え、さまざまな葬儀スタイルでペットを送ることができるようになっています。遺骨だけ骨壺に入れてもらったり、ペット霊園にお墓を作ったり、自宅にペットの仏壇を置いたりと自分とペットにあった方法を選びましょう。いつもそばにいたい方は、遺骨をパウダーにしてペンダントに入れることもできます。

落ち着いたら新しいペットを迎えることも

新しくペットを迎えることで、ペットロスから回復できることもあります。新しいペットを迎えることは前のペットの代わりでもなく、前のペットへの裏切りでもありません。

アイペット損害保険株式会社の調査(2016年)では、「ペットとお別れした悲しみを癒すきっかけで最も多かった回答」は「新しい犬・猫を迎える」32.7%でした。

また、「ペットとの別れから3年以上たってから迎えた」という回答が50%と最も多くなっています。新たにペットを迎えることで、「幸せな一生を送るペットたちが増える」と考えてみてはいかがでしょうか。
(関連:オキシトシン効果とは?ペットとの触れ合いで増える「幸せホルモン」

ペットロス予防に大切な「かかりつけの動物病院」

「診療方針や治療方法を丁寧に説明してくれる」「ささいな質問にも答えてくれる」そんな獣医さんがいる動物病院をかかりつけにすることは重要なことです。(参考:動物病院の選び方

不信感や不満をもったまま診療を受けることは、亡くなったときに「ちゃんと治療をしてもらえなかった」「先生が見逃したのでは」など気持ちの整理がつきにくいばかりか、怒りを覚える原因になりかねません。

ペットロスについて、獣医さんやスタッフが「どのように考えているか」質問してみるのもいいかもしれません。(参考:ヒトと動物の関係学第3巻ペットと社会

近くにペットロスの人がいたら、気にかけつつもムリに励まさない

ペットロスの人に「話を聞いてほしい」と言われたら、聞く準備をしておく程度にとどめておくほうが相手も気楽です。友人や同じペットを飼っている仲間にペットロスの人がいれば、「助けたい、力になりたい」と思うでしょう。

ご自身が「励まされてうれしかった」という方は、励ましてあげたくなると思いますが、やはりムリは禁物。誰しもそっとしておいてほしいときがあるはずです。

話を聞いて一緒に悲しむことで癒えてくる

人のペットロスを聞くときは静かに受け入れ、一緒に悲しみます。「飼育方法やペットへの思いが自分と違う」と思っても、ひとまず黙って聞く気持ちが大切です。「私はこうだったからあなたも」と意見を押し付けたり、しつこくアドバイスしたりは控えましょう。

かえって心を閉ざしてしまう危険性があります。「明らかに与えてはいけないものを食べさせた」など、間違った飼育方法をしていた場合もあえて指摘せず、次のペットを飼うときにそっと教えてあげるといいでしょう。

ムリに次のペットを勧めないことも大切

安易に「次の子を飼ったほうがいいよ!」と勧めないようにしましょう。新しくペットを飼うと、確かに気持ちが切り替わり前向きになることが多いようです。

しかし新しくペットを飼うことを、亡くなったペットやいなくなってしまったペットへの「裏切り」と受け止める人もいることも事実です。特にまだ日が浅い場合はかえって傷つく恐れもあります。

ペットと過ごした日々はかけがえのないもの

ペットと過ごした日々

一緒にいた時間の長さに関わらず、ペットも飼い主さんも幸せな時間を過ごしたのではないでしょうか。ペットとの別れは、どのような形でもツライもの。いろいろと後悔することがあるかもしれません。

しかし、楽しかったことや嬉しかったことはたくさんあったはずです。ペットを失って悲しいのは当然のことで、決して変ではありません。ツライときは、同じ立場の人とのミーティングに参加したり、専門家のアドバイスを受けたり、思い出をつづったりと様々な方法を試してみてはいかがでしょうか。

まだペットを失った経験のない方は、考えるだけでも怖いと思います。ただ、恐れたり怖がったりするよりも、たくさんの愛情を注ぎ、やさしく声をかけて撫でる時間をたっぷりとるほうがペットも飼い主さんも幸せです。かけがえのない日々を大切に過ごしてください。