野生のデグーは、南米チリのアンデスに生息しています。チリは国土が全長4300kmの赤道から南極まで続く細長い国です。
アンデス山脈というと標高の高い山々がそびえるイメージですが、デグーはおよそ1200mあたりのアンデス高原に生息しています。デグーたちはアンデスのどんな環境で、どのように暮らしているのか調べてみました。
アンデス山脈はどんな山脈?
アンデス山脈といえば、世界遺産のマチュピチュやチチカカ湖を思い浮かべる方も多いかもしれません。かつてアンデス文明などが栄えたことからも、どことなく神秘的な場所というイメージもあります。
アンデス山脈は南アメリカ大陸西側に沿い、南北は約7500kmにもわたる世界で最も長い山脈です。山脈の幅が広いところでは600kmもあります。ちなみに、最高峰はアルゼンチンにある標高6959mのアコンカグア山です。
気候は高度や地域によって大きく異なります。例えば標高が5000メートルを超えるようなところは、氷河があり人が住めない気候ですし、海岸地帯は温暖で乾燥しています。
また、高温多湿のジャングル地帯もあります。
デグーの生息地は過酷な環境
デグーが暮らすのはチリ中部のサンティアゴに近い、アンデス高原地帯です。標高は1200m程度で、険しい山肌や岩場に巣穴を作って暮らしています。険しい岩場を走るため、デグーは脚力やジャンプ力があります。
昼はカラッとした高温になり、夜は0度程度まで冷える過酷な環境です。暑くても乾燥した地域に住むため、日本の夏のような湿度の高い気候が苦手です。
ちなみに、日本とは季節が逆です。10月から4月くらいまでが夏の気候、5月から9月くらいは冬の気候となっています。
群れで暮らすデグー
野生のデグーは家族単位で、コミュニケーションをとりながら巣穴を作って生活しています。群れの仲間は仲良く行動を共にし、群れの中では1匹が寝るとほかのデグーも寝る様子が観察されます。
多頭飼育をするとデグー同士で仲良くなりやすいのも、もともと群れで生活する動物だからです。群れの構成はオスが1~2匹、メスが数匹とされていますが、15匹程度の群れで暮らしているデグーや、若いオスだけで集まった群れもあります。
また、野生のチンチラやテンジクネズミ(モルモットの原種)と一緒に暮らす群れもいます。厳しい環境のもとでは、捕食者であるげっ歯類たちは集まって生活するほうがより安全です。1匹で飼育しているデグーは、飼い主さんを群れの一員としてみなしているのではないでしょうか。
デグーの巣穴は地下室
デグーは地面を浅く掘って、トンネルのような巣穴を作って暮らしています。巣穴は1つだけではなく、子育て部屋や寝室などに分かれています。
また、巣穴の出口には石や草などを置いてカムフラージュしています。「デグーは頭がよい」といわれますが、こういったエピソードからも頭の良さがうかがえます。
デグーが餌を探して昼間留守にする間、チンチラが眠ります。
そして、デグーが戻る夜に餌を探しにいくというように、野生のチンチラやほかの動物とは時間帯で住み分けて、うまく共有する場合もあります。
高いコミュニケーション能力
厳しい環境のなか群れで生活しているので、仲間同士のコミュニケーション能力が発達しています。コミュニケーションをとる方法は、約20種類はある豊富な鳴き声です。
たくさんの鳴き声を使い分け、会話をしています。よくいわれる「アンデスの歌うネズミ」はここからきています。
(参考:デグーの鳴き声でわかる喜怒哀楽!いろいろな鳴き方をご紹介します。)
デグーは音声でするコミュニケーションが発達しているので、聴力も発達しています。大きな音はもちろん、ちょっとした音にも驚きやすいのもそのためです。デグーと暮らす方は、できるだけ静かな環境で飼ってあげてください。
尿のフェロモンによるコミュニケーションもあります。フェロモンの匂いで個体の区別をつけています。個体識別ができるので、群れの中での近親交配を避けることができます。
デグーは粗食
過酷な環境で暮らすデグーの食事は、粗食です。野草やサボテン、樹皮などが中心で完全草食動物です。高カロリーのドライフルーツやひまわりの種などをたくさん与えると、デグーにはよくないことがわかります。水分は、豊富に流れる川や湖があるわけでもなく、草の露などを飲んでしのびます。
どんな植物が生えている?
アンデス山脈の植物にはどのようなものがあるか調べてみました。野生のデグーが食べているものを調べるとサボテンや樹皮と出てきます。あまり資料はなかったのですが、いくつかアンデス特有の植物を見つけることができました。デグーたちはこれらの植物を採って食べているのかもしれません。
「ロゼットビオラ」はアンデスの過酷な環境のなかで咲く「スミレ」です。日本で見るようなスミレとは異なり、サボテンに似た多肉質の葉が特徴です。
「エリシオケ属のサボテン」はチリ原産のサボテンで、岩のくぼみに自生しています。痛そうなトゲがあるものの、美しい花を咲かせるものも多く、日本でも栽培している人がいます。
「チリマツ」別名を「チリ―パイン」、「アラウカリア」、「フサナンヨウスギ」とも呼び、南米チリ・アルゼンチンのアンデス山脈にしか分布しない「ナンヨウスギ科ナンヨウスギ属」の常緑木です。
デグーの天敵「猛禽類」
猛禽類は、ワシやタカ、フクロウなどの鳥類です。空を舞いながら地上にいるデグーのような小動物を狙い、脚でつかんで連れ去ります。デグーはまさに「わしづかみ」という言葉通り、上からつかまれると暴れることがあります。
これは、「上から捕食されるために襲われる」と思ってしまうためです。デグーを驚かせないためにも、上からはつかまないようにしましょう。しっぽが取れやすいのも、敵に捕まったときに尾だけを置いて逃げることができるからです。
野生のデグーと飼育下のデグー、寿命はどのくらい違う?
野生のデグーは、アンデス高原の乾燥した気候下で、険しい岩場に巣穴を作ります。過酷な環境に群れで暮らしていて、天敵も多いので1年から2年程度の寿命といわれています。
長く生きられないことが多いのですが、飼育下のデグーの寿命は6年から8年と言われています。私が知っているかぎりでは、最長11年生きたデグーも!
野生のデグーと飼育下のデグーでは、それくらい寿命に違いがあるんです。
縁あって一緒に暮らすようになったデグーには、少しでも長生きしてほしいものですよね。それでもデグーとお別れするときは必ずやってきます。最後のとき、お互いに「出会えて良かった」と思えるような関係を目指せればと思います。