デグーはかわいいだけでなく、実はとても頭がいい動物です。デグーと暮らしている方は、すでにデグーの頭の良さを実感している方も多いのではないでしょうか。大学や研究機関の実験結果では、すでにその頭の良さがわかっています。
どのような実験が行われたのか、どのような結果から頭のいい動物と言われるようになったのか、そのエピソードをご紹介します。かわいいだけじゃない、デグーの魅力を探っていきます。
社会的な行動をする
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野生のデグーは、アンデス山脈の高地に10匹程度の群れを作って生活する社会性の高い動物です。アンデスの高地という過酷な環境で生きているため、単独行動をとらず群れで行動することで自衛していると考えられています。そのため、自分のテリトリーに他のげっ歯類がいても争わず、同居することもあります。
鳴き声が大切
群れで行動するので、コミュニケーション能力が発達しています。個体間では鳴き声で会話をしてコミュニケーションをとっています。危険を知らせたり、求愛したり、催促したりと何種類もの声を使い分けています。
飼い主にも鳴き声で自分の要望や不満を伝えていることがあります。一緒に過ごすうちに、だんだんデグーの望んでいることがわかってくる飼い主も多いのではないでしょうか。
鳴き声を学習する?
デグーは生まれた直後から鳴くことができます。理化学研究所の研究では、デグーは約15種類の音声を持っているようです。出生直後に親から離して単独で飼育しても、状況に対応して鳴けることから、音声の使い分けは生まれつき持っていると考えられています。
(参考:デグーの鳴き声でわかる喜怒哀楽!いろいろな鳴き方をご紹介します。)
しかし、求愛の音声に関してはある程度成長してから発するようになります。最初はいろいろな状況で求愛の音声を出すのですが、だんだん求愛の場面でしか出さなくなっていきます。
これはデグーが成長にしたがって、求愛の音声は「いつだすか」を学習しているということになります。このことから、デグーには後天的に鳴き声を学習する能力、使い分けを学習する能力を持っている可能性があります。
デグーは自分の名前がわかる
飼われているデグーの多くが、自分の名前を呼ばれたことがわかっているかのような仕草をしてくれます。部屋で遊ばせている時も、名前を呼んだら飼い主のところに来てくれるからです。
たとえば、名前を呼んだあとにおやつをあげることを習慣化させます。そうすることで「名前を呼ばれるといいことがある」ということを覚えて、呼ぶと来てくれるようになります。
※個体差があり、うちのデグー姉妹は呼んでも反応が薄いです
偶然発見されたデグーの行動
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独立行政法人理化学研究所でのことです。20音声の実験のために飼育されていたデグーたちが、大きな「砂浴び容器」に、中くらいの入れ物「エサ入れ」を入れ、さらにそのなかに小さなおもちゃのボールを重ね入れる行動をとっていました。
当時飼育していたすべてのデグーにこの行動が見られたということで「特別なデグーだけができる」ということでなかったことがわかります。このようなことから、デグーは入れ子の構造が理解できるということがわかったようです。
「日本動物心理学会第56回大会講演(2006年)」の理化学研究所脳科学総合研究センターによると、大・中・小のカップにカップを重ね合わせることができるのは、生後11ヶ月以降の人間の子供と同じだということです。
入れ子は誰でもできるわけではない
頭のよい類人猿のチンパンジーも、カップを重ね合わせることができそうですが、実は自発的には作ることができません。訓練を重ねたチンパンジーだけが、ようやくできる動作です。人間からすると入れ子は簡単そうな動作ですが、動物にとっては難しい行動であることがわかります。
他に入れ子を作れる動物は、言語訓練を受けたヨウムという鳥だけです。げっ歯類であるデグーは、特別な訓練を積まなくても自発的に重ね合わせることができることから、高い知能を持っていることがわかります。
人間の子供が、入れ子をできるようになる時期と単語をつないで話せるようになる時期は一致しているといわれています。多彩な鳴き声でコミュニケーションをとるデグーも、なにか関連があるのかもしれません。
デグーは道具を使うことができる
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この入れ子づくりに注目した理化学研究所は、デグーが道具を使うことができるのでは?と考えました。もともとデグーは立ち上がって前足を器用に使います。デグーの前足はパッドが出ているので、ものをつかみやすいつくりになっています。
デグーは餌を前足で持ちながら食べることができます。こういったことからも「道具の使用が可能なのではないか?」と実験することになりました。この研究では、デグーが「熊手」という道具を使って遠くにある餌をとれるか?熊手を道具だとデグーが理解できるか?を調べました。
訓練をした結果
最初はぎこちなかったり、うまくできなかったデグーたちですが、だんだん器用に餌を取ることができるようになりました。しかも、デグー自ら角度を調節したり、移動させたりと試行錯誤していくことで、合理的な熊手の使い方を習得していったということです。
熊手を遠くに置いても取りに行って使い、今まで使っていた熊手と異なる色や大きさのものでも「熊手と認識して使っている」という行動も見られました。
さらに「熊手にそっくりだけど実は歯がついていなくて使えない」というニセモノ熊手を一緒に置いておくと、ちゃんと使える熊手を選ぶこともできたのです。つまり、「デグーは熊手を道具として認識し、さらに使えるかどうかを考えることができる」ということになります。
この研究結果は、2008年国内の新聞各紙に取り上げられたばかりでなく、『The New York Times』『Scientific American』など海外でも取り上げられました。げっ歯類が道具を使うというのは、それだけインパクトのある話題だったとういうことがわかります。
デグーはどうして道具が使えるの?
デグーはなぜこんな高度なことができるのでしょう。理化学研究所の入来先生は2008年発行の『RIKEN NEWS』で、その理由について次のように説明しています。
外界に働きかけることができる器用な手と、その結果を確かめることができる高機能の目という霊長類が持っている特徴が、たまたまデグーにもあった
引用:REKEN NEWS
デグーのこういった能力を研究することで、人間の脳のことを知ることができるといいます。頭のよいデグーは、人の脳や言語の誕生の研究にも使われるようです。
飼っているデグーが、みんな入れ子づくりや熊手を使えるかどうかはわかりません。できなくてもそれはたまたまです。環境や個性もあるので、うちのデグーはできない!と悩む必要はありません。
しかし、新しいことを覚えてくれる可能性はあります。我が家のデグーたちも新しいイタズラや遊びをどんどん覚えています。この好奇心旺盛なところが、デグーの魅力とも言えるかもしれません。